月の兎
『月の兎』 小川芋銭 画
解説
『月の兎』は仏典童話『ジャータカ物語』の547話中の316話目のお話です。『ジャータカ物語』とは、お釈迦様の過去世の物語で、直訳しますと「生まれてあった時のこと」という意味になります。様々な時代と場所を舞台とし、「生きる」というテーマを動物を通して、教え導いている物語です。
良寛は『月の兎』の物語を読み、「黒染めの衣の袖が涙でしみ通ってぬれてしまった」と感動の言葉を伝えています。良寛が晩年『月の兎』を書き残したのは後世にこの物語を伝えたいという願いがあったと思われます。
小川芋銭(1868〜1938)江戸で生まれ、廃藩置県で茨城県牛久市に移る。武家であったが、茨城に移ってからは農民となる。生涯、牛久市から出ることはなく、農業と画業を両立した。雅号の「芋銭」は、自分の描いた絵が芋を買えるくらいのお金(銭)になればいい、という思いで付けたとされる。俳人としても「牛里」の俳号で活躍をみせる。横山大観に認められ、日本美術院同人となる。
真筆オリジナルサイズ
紙本彩色 軸装 44cm×56cm